悪意の立証責任
過払金返還請求は不当利得返還請求によるものであるが、利得者(業者)が「悪意」の場合には利息が発生する(民704条)。この「悪意」の立証責任は請求する側にあるが、過払金返還請求においてはどのような場合に「悪意」が認められるのかが問題となる。
この点につき、原則として、悪意の受益者と推定されるとした。
すなわち、貸金業者は、貸金業法43条1項の「適用がない場合には、制限超過部分は、貸付金の残元本があればこれに充当され、残元本が完済になった後の過払金は不当利得として借主に返還すべきものであることを十分に認識しているものというべきである。
そうすると、貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の『悪意の受益者』であると推定されるものというべきである」として、悪意と認めなかった原判決を破棄し差し戻した。
さらに、㈱オリエントコーポレーションを貸主とする事案につき、同旨を示し、悪意と認めなかった原判決を破棄し差し戻した。
最高裁判決は、特段の事情がある場合を別としたが、当該事情は業者に立証責任があるし、厳格なものと考えられるので、返還請求にあたっては考慮する必要がないといえよう。
適用利率
下級審段階では、民事法定利率年5% (民404条)によるのが一般的であったが、商事法定利率年6% (商514条)を認めた判例も増加していた。
学説的には、利得者が商人であり、利得物を営業のために利用し収益をあげた場合などには商事法定利率によるべきであるとされている。
この点、年5%が相当とした。
理由として、判決は、「商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は、商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ、上記過払金についての不当利得返還請求権は、高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって、営利性を考慮すべき債権ではないので、商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないからである」と述べている。
債務整理から過払い金が発生していることも
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利息の起算日
過払金発生日の翌日を起算日とするのが通常である。
取引経過不明の場合の推定計算
取引経過の推定
業者の取引経過の開示が不十分なため(長期間経過のため破棄された場合も含む)、すべての取引経過が判明しない場合がある。
この場合には、依頼者の自己申告によって取引経過を仮定・推定し、過払金を算出するしかない。
著者の場合、推定根拠を記載した「仮計算報告書」を書証として添付している。
取引経過の推定は、基本的には依頼者の記憶をもとに行うことになる。
推定を少しでも正確にするため、下記のポイントも参照されたい。
借入時期
いつごろ借入れをしたのかをストレートにたずねても記憶がはっきりしないことが多い。
しかし、○○に就職したとき、子どもが○○に入ったとき等、一定の節目の前後かどうかで記憶が鮮明になることもある。
また、他業者との比較で、こちらのほうが半年くらい早かったという記憶も残っていることが多い。
返済額、借増し
一定パターンで返済・借入れをすることが多い。
たとえば、毎月3日に1万2000円ずつ返済し、4回に1回は10万円程度借増しをしていたといったパターンである。
そこで、判明している直近のパターンを、過去についても同様にあてはめて計算することも一方法である。
開示された経過の冒頭が端数の金額になっている場合(48万6523円など)、その後の半年~1年分程度の経過を、当該残高になるまであてはめて計算することもできる。
一部、契約書や領収証がある場合
当該契約書・領収書に約定利率や約定残高が記載されているので、これに整合するように上記のあてはめを行うことが必要となる。
一部請求でありうることの明示
推定計算によった結果、場合によっては、真実の過払い額よりも低額になることがありうる。
一部請求の場合、その旨を明示しなければ、確定判決の既判力が全部に及ぶので、後日、残額について請求できる余地を残しておくため、推定計算によった場合、訴状において「本件請求は、取引経過につき一部推定によるものを含むので、一部請求である可能性もある」などと記載しておくことが望ましい。
当初貸付残高をO円とする請求
開示された経過の冒頭が端数の金額になっている場合(48万6523円など)、その以前からの取引があることが明らかである。
この場合、上記田のとおり、推定計算をする方法もあるが、残高をO円として、以後、開示された経過により引直し計算をする方法もある。
詳細な推定計算をしないですむという利点があるとされる。
この方法は、不当利得返還請求の主張立証責任にかかわる。
すなわち、①原告の損失、②被告の利得、③損失と利得の因果関係、④被告の利得が法律上の原因に基づかないことのすべてにつき原告に主張立証責任があると考えるか、①~③のみで足り、④は被告において、被告の利得が法律上の原因に基づくことを主張立証すべきと考えるかである。
後者の立場に立った場合、当初残高をO円とする方法がとりやすくなる。
被告(業者)が、開示に係る当初残高(たとえば、48万6523円)を立証できなければ、原告の主張が認められることになる。
他方、原告において、被告の利得が法律上の原因に基づかないことを主張立証すべきだという立場(最判・多数説)をとった場合でも、開示部分当初日より以前の取引経過からして、少なくとも開示部分当初日に過払金が生じていたと推認することができるのであれば、当初残高を0円とする引直し計算が認められることになる。
この点、過払いを生じていたとの推認を否定した判例もあるが、肯定した判例も見受けられる。
肯定された事案は、開示部分当初日が平成4年9月18日であったが、その5年半前たる昭和62年3月2日から、実質年率39.785%で継続的取引かあったもので、「一般にこのような長期にわたり、このような状況の下で」超過利息を支払ってきた場合、超過部分を「元本の弁済に充当していけば、元本を全額弁済し、さらに過払金を生じることになると認められる」とされた。